「安全な食」と「学習」の支援がみんなの居場所に

向かって右端が代表の下川さん

チャイルドサポートネットワーク

  2016 年に八女市で発足した「チャイルドサポートネットワーク」は、子ども食堂と学習支援の2本柱で活動を展開しています。10 人のスタッフを中心に、高校生や会社員など 30 人ほどがボランティアとして参加。今では子どもと親だけでなく、地域の高齢者や障がいのある方などさまざまな人の「居場所」になっています。

子どもの貧困問題に地域で取り組みたい

  「八女市では高齢化と人口減少が進んでいて、次世代の育成が地域の大きな課題になっています。また、日本において子どもの貧困率は約7人に1人とされていて、地域で何か取り組めないかと思い、子ども食堂を開くことにしました」と、チャイルドサポートネットワーク代表の下川京子さんは団体設立のきっかけを話します。 
 もともと中学校の教員で、ジェンダー平等や子どもの権利に関心を持ち活動をしていた下川さん。自らの構想に賛同してくれた知人たちと団体を立ち上げ、市役所でのヒアリング、農協への食材提供の相談、市外の子ども食堂の見学など、5か月かけて準備を行いました。 

 

「子ども食堂」と「学習支援」に多様な人が関わる

 2016年7月から毎週土曜日、八女市民会館で「土曜クラブ」(子ども食堂&学習支援)を開催しています。あえて子ども食堂と名付けなかったのは、「誰でも気軽に来てほしかったから」と下川さん。

 メインのカレーライスやパスタなどに9種類もの副菜がつく栄養満点でおいしいご飯は、子どもなら無料、大人は300円で提供しています。八女市は農業が盛んな地で、子ども食堂で使う食材はほとんど農協や道の駅、個人などからいただけるそうです。子ども食堂と併せて、小中学生の学習支援も行っています。土曜クラブは当初、子どもを対象にしていました。しかし、最近は子どもや親子連れだけでなく、地域の高齢者や障がいのある方などが参加するようになり、さまざまな人にとって「居場所」としての役割を持つようになっています。

 さらに、2020 年度からは毎週火曜日に八女市立東公民館で「Hoshizora クラブ」(学習支援)をスタート。地域の小中学生が勉強するために集まり、年間の参加者は小学生が延べ 700 人、中学生は延べ500人にのぼります。 
  学習支援のスタッフとしては、地元の人や退職した教員のほか、高校生が自主的に参加しています。「高校生にとっては『ありがとう』『助かった』と感謝されて、自分が必要とされている実感があり、自尊感情が育まれる場になっているのではないかと思います」と下川さんは笑顔で話します。 
  ほかにも、農業高校が野菜と卵を提供してくれたり、高校生が SDGsを学ぶために食品ロスについて調べに来たり、管理栄養士を目指す高校生や企業の社員の方が実習や地域貢献活動として参加してくれたりと、若者からシニアまで幅広い年代の人が関わるようになり、地域に支援の輪がどんどん広がっています。 
  行政ほか関係機関との連携も進み、市から助成金が出るようになりました。社会福祉協議会と協力し、必要な人に弁当やパンを届ける活動を行ったり、市内に5つある子ども食堂の連絡会議で情報交換をしたりしています。 

 

地域の子どもたちを大人が見守りサポートする

 土曜クラブを始めて7年。小学生の頃から見守ってきた子どもたちは、高校を卒業する時期になりました。家族の介護をしていた子が無事に高校を卒業するまでになり、絵を描くのが好きだが人との交流が苦手だった子がプロの画家に励まされ、自信をつけたりと、一人ひとりの子どもの成長を長く見守れることがスタッフのやりがいになっているそうです。地道な取り組みが認められて、2022 年度福岡県青少年健全育成対策推進本部長(知事)顕彰団体に選ばれました。 
 「コロナによって社会の弱いところにしわ寄せがきて、格差が広がっています。そんな中、やはり人と人とのつながりこそ大事だと皆さん再認識されたのではないでしょうか。私たちのクラブが子どもや地域の人たちにとって家庭や学校や職場とは違う「居場所」となり、おとなが地域の子どもたちを見守りサポートするような文化(共育)を、ここ八女市で醸成できればいいなと思っています。これからもいろいろな人たちと協力しながら、活動を続けていきます」と下川さんは意気込みを語ってくれました。 (取材2023年/1月)