誰もがゆるやかに、支え合える関係に

特定非営利活動法人 久留米10万人女子会

「久留米10万人女子会」は、2016年に久留米市で開催されたイベントをきっかけに設立された特定非営利活動法人(NPO法人)です。地域で人と人がゆるやかにつながり、信頼し支え合える関係を作ることを目指しています。

活動の柱は、校区ごとのおしゃべり会「ラボ会」と、ラボ会から生まれた気づきやアイデアを形にする「地域暮らし研究」の2つ。会のネーミングは「女子会」ですが、団体のメンバーや参加者には男性もいて、誰でも気軽に参加できます。

 

地域の女性たちが出会い、やりたいことを叶える

会のはじまりは2016年に「久留米シティプラザ」がオープンするとき、企画の公募に手を挙げて開催した「久留米100人女子会」です。「久留米市には46校区あるので、各校区から女性が2人ずつ集まって地域や自分のことを話せば100人会になると思ったんです」と代表理事の國武ゆかりさんは振り返ります。

女性が集まる会にしたのは、國武さんをはじめ実行委員が久留米という地域や女性ならではの課題を感じていたからです。「久留米は地縁や血縁が強くて良い面もある一方で、しんどさを感じる人もいます。だから、違うところで助け合える関係ができるといいなと。また、上の世代の方々は『地域に若い人がおらん』と言うけれど、若い人はいるので、つないでいくことが私たち世代の役割という思いがありました。それに、子育てや介護などで頑張りすぎて疲れている女性と社会から疎外されがちな女性たちが気軽につながり、思いを発言して、夢を実現できる一歩となる場にしたいと思いました」と國武さん。会では「自分のできることに何をかけ合わせたら夢が叶うか」というテーマでワークショップを行い、人とのつながりが大切という声が多く聞かれました。

そこで2017・18年度はさらなる出会いの場を作るために「1000人女子会」と名前を変え、規模を拡大して開催。参加者は、自分ができることややりたいことを書いたゼッケンをつけて、交流しやすいように工夫しました。女子会の出会いから、子育てサークルやスポーツチームの立ち上げ、起業などさまざまな夢を叶える人も出てきました。

校区ごとのおしゃべり会と、思いを形にする活動を展開

イベントだけでなく日常的な場にしようと、2018年8月に任意団体「久留米10万女子会」実行委員会を発足。2021年にはNPO法人格を取得しました。久留米市の人口は30万人で、そのうち成人女性は13万人。「10年後に10万人がゆるやかにつながり、誰もが暮らしやすいまちに」という思いが込められています。

現在、活動の柱は2つあります。1つは「ラボ会」で、校区ごとに月1回おしゃべり会を開催。自分の校区以外に参加することもできて、開催場所はコミュニティセンターやファミレス、メンバーの自宅などさまざま。開催日時も土曜朝や平日夜、オンラインなどそれぞれで、数か月に1回まで含めると、全46校区のうち半分近くで活動しています。あえてテーマを決めず、何気ないおしゃべりから困りごとや悩みが出てきたり、やりたいことを話したりしています。

もう1つの「地域暮らし研究」は、ラボ会で出てきた企画を行政やいろいろな人と共に形にする取り組みです。「自分たちの声がまちに反映されると実感できる機会を積み重ねたい」と國武さんは意図を明かします。これまで、障害をテーマにしたイベントを市と協働で開催したり、社会福祉協議会のバスを借りて視察研修に出かけたり、婚活企画で何組もカップルが成立したりと、多様な思いを実現してきました。

一人ひとりの思いを大切に、安心して暮らせる地域に

理事の村井麻木さんは「ラボ会には高校生から80代まで参加してくれて、皆さんの居場所になっています。はじめは内向きだった方が、少しずつ打ち解けて友達を作り、ついにはラボ会の方の影響で民生委員になったケースも。今は情報があふれていますが、リアルにつながることの大切さを実感しています」と話します。

今後の活動について、國武さんは「高齢化が進みコミュニティが希薄になる中で、自分のことを気にかけてくれる人がいれば心強いですよね。ゆるやかに誰もがつながり安心して暮らせる地域にしたいし、誰もが尊重されて自分の思いを発言できると伝えたい。地域は数年では到底変わらないけれど、確実に変化は起きていて、これからも一人ひとりの思いや物語を大切にしながら活動していきます」と語りました。
(取材/2024年2月)