生姜の栽培・加工・販売等で京築エリアを活性化

京築ジンジャープロジェクト

京築ジンジャープロジェクトは、京築エリア(行橋市・豊前市・苅田町・みやこ町・吉富町・上毛町・築上町)の女性たちが集まって、2017年に3件の農家さんに協力をお願いし、トリオレのスタッフと一緒に立ち上げた団体です。生姜の栽培から商品加工、販売、イベントなどを通して、地域を盛り上げるために活動しています。

きっかけは小さなケーキ店のジンジャーシロップ

京築ジンジャープロジェクトが誕生したきっかけは、2014年に苅田町で開業したケーキ店「洋菓子工房トリオレ」のウェルカムドリンクでした。オーナーパティシエの夫と管理栄養士の資格を持つ妻・寺尾咲子さんが営む店で、夏はジンジャーエール、冬はホットジンジャーをお客様に出していたところ、おいしさが評判に。そこでジンジャーシロップを商品化することにしました。

「京築エリアには ゆず、ブルーベリー、いちじく、レモン、芋など特産物が豊富にありますが、その当時、苅田町を含めた京築全体で取り組める特産物がありませんでした。そこで寺尾さんが、生姜で地域を活性化できないかと考えたのが始まりです。実はもともとこのエリアで生姜は栽培されていなかったものの、寒暖差のある気候や土壌が生姜の栽培に適していると分かり、せっかくなら地元で育った生姜でシロップを作りたいと。そして自分の店にとどまらず、地域の農家さんが生姜を栽培し、地元で加工して商品化、販売するサイクルを作ることで地域を活性化しようという熱い思いで仲間を募り、寺尾さん自らが代表となって2017年に京築ジンジャープロジェクトを立ち上げました」と、同団体でプロモーションチームのリーダーを務める吉高裕美子さんは、経緯を説明します。

生姜の栽培にゼロから挑み、その生姜で多彩な商品を作る

現在、プロジェクトの参加者は41人で、3つのチームに分かれて活動しています。まずは、生姜を栽培する農家15軒が所属するファームチームです。「思いに賛同した主に兼業農家さんが参加してくれました。ただ、誰も生姜を作ったことがなく、ゼロからのチャレンジ。専門家に指導してもらったり、栽培しているところに見学に行ったりと勉強を重ねて、失敗を繰り返しながら安定して栽培できるようになりました」と吉高さん。

次に、ファームチームが栽培した生姜を加工するプロダクトチームがあります。京築エリアの16店舗が参加して、40を超える商品を作っています。ケーキ店のジンジャーシロップをはじめ、弁当店のドレッシング、醤油店の甘酒、カフェのジャム、食品会社の炊き込みご飯の素など、バラエティ豊かなラインナップです。

そして、商品を広く知ってもらい販売につなげるプロモーションチームには、8人のメンバーが所属しています。生姜の収穫時期にあたる10月頃に毎年マルシェを主催するほか、県内各地のイベントに出店。また、一般の参加者を募って、農家で生姜掘りイベントをしたり、公民館で生姜のアロマオイルを入れたバスボムやジンジャーシロップを作ったりと、地元で生姜の魅力を広める活動も展開しています。

みんなで楽しく活動して、生姜を京築エリアの特産品に

これまでの活動の中で、特に吉高さんの印象に残っているのは、2020年に福岡市の大丸福岡天神店で1週間出店したことです。「京築から福岡市までは車で1時間半ほどかかります。みんなで1週間のシフトを組み、毎朝早くから数台の車に相乗りして会場に行き、生姜ご飯を炊いて、1日販売して、自宅に帰ってくるのは夜遅く。熱い思いを持った個性豊かなメンバーで、チームワークが良く、みんなで力を合わせるとこんなに大きなパワーを発揮できるのだと感激しました」と吉高さんは振り返ります。

同団体は、設立当初から行政とも関わってきました。県の農林事務所普及指導センターから生姜栽培に関して情報を提供してもらったり、自治体への取材でプロジェクトを紹介してもらったり、イベントへの後援や出店で協力したりと、お互いに相談し合える関係を築いています。

「私たちは利益や規模を追求するのではなく、みんなで手を取り合い、自分たちが楽しみながら活動することを大切にしています。最近は少しずつ活動が知られるようになってきて、うれしく思っています。これからも楽しく継続して、京築エリア全域で生姜を特産品にして地域を盛り上げていきたいです」と笑顔で語りました。(取材/2024年2月)