「クロスロードゲーム」で地域の対話力をアップ

ふくつ男女共同参画協議会「綸りん」

 ふくつ男女共同参画協議会「綸りん」は、2010年1月に福津市で発足した団体です。生活に関わる教育や文化、福祉、食生活などをテーマに活動する12団体と12人の個人会員で構成されています。防災教育のカードゲーム教材「クロスロード」を活用したワークショップが好評で、市内外で出前講座を行っています。

福間町と津屋崎町の合併をきっかけに団体を設立

 2005年、旧福間町と旧津屋崎町が合併して誕生した福津市。その3年前に制定されていた「福間町男女がともに歩むまちづくり基本条例」を継承し、「福津市男女がともに歩むまちづくり基本条例」が作られました。この条例は、人間として一人ひとりが自立し、平等であることを基本に、家庭や学校、職場、地域で生涯を通じて誰もがのびやかに生き、参画できるまちづくりを目指しています。

 それぞれの町で活動していた女性たちが、合併を機にあすばるの「地域まちづくり支援事業」で学び、福津市役所からの声かけもあり、条例の趣旨の実現に向けて活動する団体を作ろうと準備委員会を発足。賛同してくれた15団体と6個人で、2010年1月にふくつ男女共同参画協議会「綸りん」を設立しました。「条例のベースは『ともに歩む』。合併した福間と津屋崎がともに歩む、男性と女性がともに歩もうという思いで団体を立ち上げました。」と会長の山田宏子さんと書記の久保カヨ子さんは設立当時を振り返ります。『綸りん』という名前の「綸」という漢字には、太い糸で結ばれるという意味があり、絆、輪、つなぐという思いが込められています。

 

県内各地で「クロスロード」のワークショップを開催

 綸りんは毎月定例会を開催し、会員相互の情報共有、講演やセミナーへの参加、他の自治体や団体との交流、出張講座、年2回のニュースレター発行などを行ってきました。中でも最近、特に力を入れているのが「クロスロード」を用いたワークショップです。クロスロードは、阪神・淡路大震災での災害対応をもとに、防災教育の教材として開発されたカードゲームです。

 同会では、防災の分野に女性の視点が必要と考えていたところ、築上町に女性の消防団員がいると知り、2014年に同町を訪れてお話を伺いました。また、福岡市の防災センターで行われた講座に参加し、防災に関する知識とクロスロードでのファシリテーションスキルを身につけました。これらの経験を生かして、福津市の職員研修や市民講座をはじめ、県内各地に出向いて、クロスロードを活用したワークショップを行うようになりました。今では、防災に加え、男女共同参画や地域独自の課題についても、クロスロードのスタイルを活用して学びを深めています。クロスロードは、人の話を黙って聞く、否定しないといったルールがあり、自分の本音を言いやすく、初対面でも関係性を深められるのも魅力です。「問題を自分ごととして捉え、自分の意見も言えて、とても楽しかったと参加者の満足度が高いので、引き続き広めていきたい」と、メンバーもやりがいを感じています。

住みやすさで人気のまち、若い世代の団体も誕生

 海や山など豊かな自然が身近にあり、しかも、福岡市と北九州市から通勤圏にある福津市。住みやすいまちとして注目され、子育て世代を中心に人口が増えています。2018年度には綸りんや市の職員が実行委員となり、あすばるの元気塾を開催したところ、そこから福津市在住の若い世代を中心としたボランティア団体「ふくつながり」が誕生しました。輪りんの活動が、これからの地域を担う人々の新たなネットワークを生みだしています。

 「私たちは大上段に構えることなく、自分たちができることややりたいことをもとに、個人が持っている知識やスキルを共有し、助け合って活動を続けてきました。これからもつながりを大切にしながら、若い人たちと、ともに歩み、よりよい福津市をつくっていきたいです」と、山田さんは将来への希望を語ってくれました。(取材2023年/2月)