地元で地味に地道に 小さくとも本気で働く 

一般社団法人ママトコラボ

糸島に誇りと愛着を持ち、地域に根差した暮らしと働き方を大切にする人が増えることを目指して活動しています。主に子育て期の女性を、仕事を軸としたネットワークでつなげ、生活者の目線を生かした情報発信の業務や、子ども連れで仕事ができる糸島市のコワーキングスペース「前原テレワークセンター」(愛称・ママトコワーキングスペース)の運営をしています。2017年度からは市主催の「ママライター育成講座」の企画・運営を3期にわたり実施。育成したママライターに、ママトコラボが糸島市や企業などから受注した冊子やWEBコンテンツの取材と執筆の業務を発注しています。

子育て期の女性が子どものそばで仕事をする働き方を提案 

代表の尾崎さん

 ママトコ誕生のきっかけは、糸島市が2015年度に採択された総務省の「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」です。市は糸島の女性が子ども連れで仕事ができる場としてママトコを整備。その運営をママトコラボの前身の任意団体「糸島女性支援プロジェクト」が無償で依頼されました。メンバーの1人、フリーライターで現ママトコラボ代表理事の尾崎恭子さんは、自身の経験から「お母さんたちが子どものそばで仕事をしたり、交流する場がほしい」という思いがあり、ママトコは子育て期の女性が仕事を軸につながる場所になりました。

チーム制で助け合い、高め合って仕事に取り組む

  ママトコラボで受注する仕事は、子育て期の女性をチームにして取り組みます。1つの仕事を複数人でシェアし、全体を統括するディレクターが品質を厳しくチェックしてから納品。仕事はなるべく小さな単位で切り分け、時間に限りがある子育て期の女性でも、仕事をしたい人が無理なく取り組める体制にしています。また、チーム制だと他のメンバ―への引き継ぎもスムーズです。子どもが体調を崩したときに「仕事を代わるよ」「続きを引き受けようか?」と助け合うケースはよくあります。ママライターたちは、仕事を通して取材時の工夫や記事の書き方など情報交換し、互いにスキルを磨き、高め合う関係ができているそうです。「お母さん同士が助け合いと高め合いができる関係は、チーム制のいいところです。1人あたりの収入は多くないですが、仕事軸で子育て期の女性がつながり、小さくとも本気で働き、社会と関わりを持ち続けることが大切です」と尾崎さんは実感しています。

一般社団法人を設立 客観的な評価で活動を持続化

ママトコラボは2018年3月に法人化しました。それまでの約2年間は任意団体のままで事業をしていましたが、自治体や企業と仕事をする上で団体の信用度を高め、さまざまな事業を行うことを視野に入れて法人化を決断。尾崎さんは「法人化は登記や決算などが面倒そうなので、あまり乗り気ではなかったです」と振り返りますが、「定款を策定することでママトコラボの事業が明確になりました。決算では売上の推移を見ることで客観的に1年の活動を総括できるし、今後の方向性を判断する資料にもなっています」と話します。

地元で地味に地道に。やりがいと生きがいを持って働く、暮らす

2019年に糸島市人権・男女共同参画推進課から受託した「行政区の担い手づくりガイドブック」では、ママライターも企画に参加して取材などを行いました。今まで知らなかった地域の仕組みを知り、ママライター自身が「担い手」の一員だと気付くきっかけにもなりました。

ママライターの中には、当事者としての意識や地域への関心が高まり、行動を起こす人もいます。1期生の中村由佳さんは「もっと糸島のために自分ができることをしたい」と糸島市の男女共同参画委員の審議委員になりました。地域と関わりながらライターとしての見識を深めています。

「私たちはきらきら輝きたいわけではなく、地元で地味に地道に、やりがいや生きがいを持って暮らして、子どもを育て、働いていきたい。それができれば『糸島市は暮らしやすい』と実感できる人も増えるのでは。そのための仕事や仕組みを作っていきたいです」と尾崎さんはママトコラボの展望を語りました。

(取材:2020年2月)