全ての子どもが夢と希望を持って成長できる地域づくりを

中央が大谷さん(代表理事)

認定特定非営利活動法人チャイルドケア

 「認定特定非営利活動法人チャイルドケアセンター」は、大野城市を拠点に、春日市、太宰府市、筑紫野市、那珂川市(筑紫地区全域)でも活動を行っています。「子どもを真ん中に地域で育て、育ち合う」を理念に、子育て支援を通じたあたたかい地域社会づくりを目指して設立されました。

子育て情報誌づくりからNPO法人の設立へ

  チャイルドケアセンターの前身となったのは、代表理事の大谷清美さんが1998年に友人達と創刊した子育て情報誌「びぃ〜んずキッズ」でした。
 「大野城市で子育て世代に向けた情報紙を作りたい」という思いを持つ子育て中の友人達と、自宅に子連れで集合して企画・編集会議を開き、飛び込みで取材に行くなど、全員が未経験の中、フリーペーパーを手探りで制作しました。
  その当時、取材を通じ「育児サークル同士のつながりがなく、各サークルの代表者は運営が大変と感じていることを知って、横のつながりを持って支え合うようにしたいと思いました」と大谷さん。代表者の皆さんと話し合う中で、法人化した方がメリットが大きいと感じ、NPO法人を目指すことにしました。
 NPO法人格取得に向けメンバーを募り、集まった仲間と共に定款や事業計画書を作成。何度も県庁に足を運ぶなど数々の努力を重ね、2000年にNPO法人格を取得しました。大谷さんは「諦め
そうになったときも、思いを同じにするメンバーと一緒だったから頑張れました。苦労を苦労とも思わず、楽しかったですね」と当時を振り返ります。
 
更に努力を重ね、2020年には、寄付者が税制上の優遇処置を受けられる一方で認定条件が厳しい認定NPO法人としての認定を受けました。

子ども食堂を通じて子どもたちの地域の居場所をつくりたい

 チャイルドケアセンターで現在、特に力を入れているのが2015年からスタートした「こども食堂」と、こども食堂に寄付された食材を管理し循環させる「ふくおか筑紫フードバンク」です。子どもの居場所をつくり、継続的に食材の支援を続けるため、これらの活動に両輪で取り組んでいます。


 「こども食堂は『貧困の子どものための場』ではなく『子どもが楽しく集うあたたかい居場所』としてはじめました」と大谷さん。地域の子どもたちが幅広い世代の人と交流をもち、多様な価値観の中で社会体験を重ねられる場を目指しています。


 
活動の幅が広がるにつれ、企業や地域の人からの協力の申し出も増えてきました。西松建設株式会社九州支社はCSR(企業の社会的責任)として大野城市にある独身寮を、「おおのじょうこども食堂みずほまち」の会場及びフードバンクの食料保管場所として提供しています。こども食堂を行う日には社員が手伝いに来ています。子どもたちや地元の人たちが集う場所ができたのはもちろん、社員からも「地域を歩いていると声をかけてもらうことが増え、本当の意味で地域に根付いていると感じる」と喜びの声が届いています。こども食堂に関する事業は、SDGsの観点から企業の注目度も高く協力する企業が増えています。


 
チャイルドケアセンターでは、こども食堂を立ち上げたい人に寄り添う「ふくおか筑紫こども食堂ネットワーク」を構築し、こども食堂の設立・運営に寄り添い支援する伴走型の支援事業を行っています。現在、筑紫地区に55か所ものこども食堂が立ち上がり、それぞれのこども食堂が協力し合えるネットワークをつくっています。

 新たにこども食堂を立ち上げる際には、同時に「ふくおか筑紫フードバンク」にも登録してもらっています。個人や企業からの膨大な量の寄付をフードバンクが窓口となって受け付け、各こども食堂へ分配して食材を余すことなく活用するという仕組みです。フードバンクでもこども食堂同士の横のつながりをつくり、食材だけでなく、食品の取り扱いや運営などに関する情報も共有しています。
 
「『子どもたちにたくさん食べさせてあげて』と目に涙を浮かべて寄付してくれる人食材を届け、『頑張らんといかんよ』と笑顔で励ましてくれる人。ふくおか筑紫フードバンクには多くの人たちが寄付に訪れます。私たちはそのあたたかい気持ちも子どもたちに届けています。」と大谷さん。
 
新型コロナウイルス感染症の影響でこども食堂を開催することが難しい地域もありますが、食料やお弁当の配布に切り替えるなど、各こども食堂が柔軟に活動を続けています。

これからも柔軟な対応で子どもや地域に寄り添いたい

 「こんな世の中になったら楽しいっちゃない?」という気持ちで、わくわくしながら活動してきたと言う大谷さん。これまでの活動が評価され、チャイルドケアセンターは、内閣府の「令和3年度女性のチャレンジ賞 特別部門賞」を受賞しました。

 「今回の受賞は、関わってくださった皆さんの協力があってこそ。一人ひとりへの感謝の心を忘れずに、これからも子どもたちや地域の人たちと伴走していきたいです」と、大谷さんは「感謝」という言葉を頻繁に交え、お世話になった人たちとの心と心のつながりも大切にしています。

 2021年には「福岡県こども食堂ネットワーク」が始動しました。チャイルドケアセンターは立ち上げメンバーとして関わり事務局を担っています。コロナ禍でも感染対策のノウハウの共有を行い、行政や大学生、食堂運営者をつなぐ支援を行っていくということです。チャイルドケアセンターは今後も活動を広げるとともに、行政の行き届かないさまざまな困りごとに目を向けて、細やかな支援を仕掛けます。
 
 「寄り添い方は一つではないと思います。目の前のニーズに対し、私たちが柔軟にやり方を変えればいい。広いストライクゾーンに、たくさんの人の手で支援のボールを投げるようなイメージで、全ての子どもたちが夢と希望を持って成長できる地域づくりを目指したいです」と、大谷さんは力強く語ってくれました。
(取材:2021年9月)