「防災ワークショップ」と「トーキングカフェ」の2本柱で活動

Say!輪(セイリング)

Say!輪(セイリング)は、子育て講座で知り合った北九州市の女性たちが立ち上げた団体です。現在は、乳幼児のいる母親をはじめ、子どもからシニアまで幅広い人を対象にした「防災ワークショップ」と、ゲストとの対話から生き方のヒントを考える「トーキングカフェ」を2つの柱として活動しています。

母親6人で団体を立ち上げ、東日本大震災の被災地の声を伝える

Say!輪は、北九州市で開かれた乳幼児の子育て講座に参加していた母親6人によって、2012年に設立されました。「みんな乳幼児のいるメンバーで、もともとは2010年にゲストを招いて対話するトーキングカフェという学び合いの場を作ったのが始まりです。その後、2012年に団体にしました。団体名のSay!輪には、みんなでおしゃべり(say)をしながら、たくさんの人と輪(リング)を作っていこうという思いを込めています」と代表の古賀由布子さんは説明します。

当初はトーキングカフェの企画だけでしたが、2011年の東日本大震災をきっかけに、防災をテーマにした活動が2つ目の柱となりました。震災後、岩手出身の古賀さんが被災地である岩手や宮城の母親たちと連絡を取り、福岡で現地の声を届け、支援の呼びかけを始めたからです。イベントなどで東北の郷土料理・芋の子汁を振る舞い、被災地の母親の声をのせたチラシを配ったり、被災地で事業を立ち上げた人が作っているものを紹介するなど、さまざまな形で東北の状況を伝えました。

災害への危機感が薄い北九州市で、防災の大切さを広めたい

そもそも古賀さんは結婚して北九州市に移り住み、驚いたことがあると言います。「災害が多い東北では、子どもはみんな防災頭巾を持ち、日常的に防災訓練が行われていて、どの世代でも災害について高い意識を持っていました。でも、北九州市は災害が少ない地域のため、防災訓練があまり行われていなくて危機感も感じられない…。災害は全国どこでも起こる可能性があるから、北九州市でも防災の重要性について広く伝えたいと思いました」と古賀さん。

 Say!輪は月1回程度、北九州市内の市民センターや小学校、女性団体、町内会などで防災ワークショップを開催。年に数回は、市内で開催される防災イベントに運営側として参画しています。親子で気軽に体験してほしくて、防災クイズ、シーツで担架づくり、ビニール袋を利用したオムレツづくり、大声コンテストで大きな声を出す練習など、楽しみながら身につくコンテンツをそろえています。

古賀さんは防災士の資格を取り、市内の自治会等で行う地域防災会議のファシリテーターとして多様な人たちの声を聞くことで、課題も見えてきました。

「北九州では絶対に災害が起こらないと思い込んでいるシニアが多い一方、若い世代は危機感を持っていて、世代間のギャップを感じます。また、防災訓練をすると料理や掃除は女性しかやらなかったり、女性はプライバシーを守りたいのに、男性から避難所にカーテンをつけるのは良くないという意見が出たり…。女性側の事情を男性にしっかり伝えることや、男女共同参画の視点が重要だと感じています」

ネットワークを広げて、みんなで助け合い防災を啓発

メンバーの伊藤均美さんは現在、沼市民センター館長を務めています。あすばるの「地域のリーダーを目指す女性応援研修」を受講後、北九州市の試験を受けて採用されました。「Say!輪で活動する中で、地元の熊本が豪雨や地震に見舞われ、いとこの家がなくなり、自分にできることをやりたいと思って、防災士の資格を取りました。今度は館長という立場で地域の方の声を聞き、防災もしっかり担っていきます」と話します。 

活動を始めた当初は、「防災」といってもなかなか関心を持ってもらえなかった、と振り返る古賀さん。しかし、北九州市でも防災に関する活動をしているNPOや大学などのグループが増えて、「防災Lab.北九州」というネットワークができました。「つながることで活動が広がり、行政に声が届くようになりました。私たちは特に女性と防災という視点を大切にしながら、これからも多様な団体と手を取り合い協力し合って、防災の啓発を進めていきます」と力強く語ってくれました。(取材/2025年3月)