海外研修を経験したメンバーが全60市町村の首長らと毎年懇談

前列向かって左が会長の谷口さん、真ん中が副会長の八代さん。

ふくおか県「翼の会」

ふくおか県「翼の会」は、福岡県で1983年に始まった女性海外研修事業「福岡県女性研修の翼」の参加者によって結成された団体です。

同事業では毎年20人のメンバーが海外へ飛び、先進的な国々のジェンダー平等や各種制度などについて学んできました。ふくおか県「翼の会」では、その経験を生かして、県内で男女共同参画社会の実現を推進すべく、全60市町村を対象に行政調査や首長懇談会などを行っています。

女性海外研修事業で学んだことを地域に還元

大曲副知事表敬訪問

福岡県女性研修の翼で訪問した国は、ヨーロッパ各国やアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど。現地でジェンダー平等の取組みや状況を見て聞いて感じて、最新のトピックについても学んできました。この研修に参加したメンバーが現地で学んだことを地域に還元しようと1988年に立ち上げたのが、ふくおか県「翼の会」です。

 設立以来、男女共同参画センターの設立や女性副知事の登用などを行政に要望し、実現に繋げました。会長の谷口洋子さんは「海外で大いに刺激を受けたメンバーの皆さんは、女性団体や会社のトップになったり、議員になったり、自治会など地域で要職に就いたりと、多方面で活躍されています。『女性研修の翼で海外に行ったことが今の活動につながっています』という方が多く、事業の素晴らしさを実感しています」と話します。

2016年に海外研修事業が終了し、県では翌年から新たに「地域のリーダーを目指す女性応援研修」をスタートしました。国際的な視野を持ち、地域の男女共同参画の推進役となる女性を育成することを目指して、東京や神奈川、岡山など他県視察を含む研修が行われています。この研修に参加したメンバーも、翼の会の会員になることができます。「国内研修も身近な話ですごくためになります」と谷口さんは言います。

行政調査と首長懇談会を行い、あすばる男女共同参画フォーラムにも参画

翼の会の活動は、主に3つあります。
1つは2003年から毎年行っている行政調査と首長懇談会です。福岡県の全60市町村の行政に対して、ジェンダー平等に関するアンケート調査を行い、その回答をもとに市町村長と懇談することで、地域におけるジェンダー平等の推進を後押ししてきました。

懇談会に参加するのはその地域に住むメンバーです。「60市町村の大半で毎年首長に会って意見交換させてもらえるのは、翼の会が認められている証だと思います」と副会長の八代由美さんは説明します。
また、毎年秋には「あすばる男女共同参画フォーラム」に参画。県民企画事業として、男性の育児介護、子どもの権利をテーマにしたシンポジウムなどを企画し、事前に会員で研修も行っています。このほか、年3回広報誌を発行しています。

首長懇談会(糸島市)
あすばる男女共同参画フォーラム

企画部を作り、さらに魅力ある組織のあり方を検討

広報誌「翼の会だより」

翼の会は2022年、新たに企画部を発足しました。
同年には、沖縄県にある同様の組織「沖縄県女性の翼」の役員とZoomで交流を実施。2023年度は、希望者を募って沖縄に行き、リアルに交流会を行う予定です。企画部会の長濱真美さんは「今後は自分たちで新たな取組みを企画しようと部会を立ち上げました。近いうちに海外研修も実施するつもりです」と話します。  
企画部を作ったのには、もう一つ別の意図もあります。
「会員が高齢化してきたことに加えて、各方面で活躍する人が多くて皆さん忙しく、会の活動に参加できる人が減っています」と課題をあげる谷口さん。そこで昨年から約300人の会員を正会員・準会員・賛助会員の3タイプに分けて、会員のスタンスを明確にしました。
また、より活発で魅力ある会にするために新たな組織のあり方を検討しているところで、企画部会のほかにいくつか部会を作り、いろいろな人が関わりやすくするという案も出ています。  

「翼の会の会員は、各々の地域で団体のリーダーをされている方が多いので、有益な情報やつながりを得ることができます」と長濱さん。
八代さんは「ここで学んだことを自分の地域で生かし、より良い地域づくりに貢献できることがうれしい」と話します。
最後に谷口さんは「これからも元気に明るく楽しく、さらに魅力のある翼の会にしていきます」と意気込みを語りました。
(取材/2023年7月)