消防・防災に女性の視点を入れて、安全安心な地域をつくる
篠栗町消防団 女性消防隊
「篠栗町消防団女性消防隊」は、2003年に篠栗町消防団で女性だけの消防隊として発足しました。同隊は、行政職員と一般市民合わせて15人が協力しながら、消防や防災に関する活動を展開しています。
行政職員と一般市民が一緒に消防や防災活動に従事
「消防団はもともと男性社会でした。しかし、時代の流れに応じて女性も入れようという動きがあり、2003年に篠栗町消防団に女性消防隊が結成されました。当時、女性団員は行政職員5人のみで、2010年から一般の女性も加わるようになりました」と説明するのは、2014年から同隊の代表を務める崎山佐穂さんです。
崎山さんは、高校・大学時代を海外と他県で過ごした後、地元の篠栗町に戻ってきました。篠栗町に永住するつもりで「地域のために何ができるかな」と考え、2012年に女性消防隊に入ったそうです。「実は、私が小学生の頃に近所の男性の消防団員が楽しそうに活動しているのを見て、私もやりたいと言ったことがあるんです。そしたら『女は入れんとよ』と言われて衝撃を受けた記憶があります。でも、今は女性でも入れると知り、カナダで生まれ育った夫と一緒に入団しました」と話します。
現在のメンバーは20代前半から40代前半までの行政職員7人と一般市民8人で、仕事や家事・育児をしながら消防団の活動にも参加しています。同隊は発足時から応急手当の普及をメインにしており、5年前から「防災にも女性の視点が必要」という考えのもとで防災分野にも力を入れてきました。近年は消防団の役割や自助・公助・共助、心肺蘇生法やAEDの使い方、防災などをテーマに、小中学校や児童館、地域、事業所などに招かれて講演や防災教室を行い、テーマも活動の場も広がっています。
元気塾を開いたことで仲間も増えた
防災については、メンバー自ら学びながら知識を身につけてきました。まず福岡県の「女性のための防災対応力向上講座」に受講生として参加。さらに女性消防隊の有志が実行委員となり、あすばるの「女性による元気な地域づくり応援講座事業(通称:元気塾)」に応募し、2019年度に「篠栗町サバイバル系女子育成講座」を開きました。熊本で避難所を運営された女性の講演を皮切りに、災害時に役立つ野外調理、避難所運営を疑似体験するゲームHUG、体育館での避難所作りなど、実践的な4回講座は大変好評でした。講座には子育て世代が多く参加し、これから女性消防隊と共に避難所運営マニュアルの改善や、防災食品の開発プロジェクトなどを進めていく予定です。
また、元気塾の開催は他にも大きなメリットがありました。「それまでの活動は単発でしたが、元気塾では数か月にわたり話し合いを重ねて作り上げる中で、一人ひとりがリーダーシップや能力を発揮して活躍してくれました。それに、妻が元気塾で出かける時は夫が協力的になったり、年配の方も議員さんも応援してくれたり、消防団長が『女性消防隊が活躍している』と公式な場で発言されたりと、行政も消防団も家族も町の人もみんなが協力して盛り上がり、女性消防隊の存在感も高まりました」と崎山さん。
コロナでも歩みを止めず、より良い地域のために貢献
2020年度はコロナ禍で通常の活動が制限されましたが、同隊は、篠栗町が行っている「篠栗エール飯」という飲食店を応援する企画の公式サポーターとして活動しました。町内では、火災の多くが飲食店で発生していたこともあり、隊員がエール飯加盟店を訪問してテイクアウトの商品を購入し、その店の火災予防に関する取組と商品をSNSで紹介するというプロジェクトです。「エール飯担当の行政職員が女性消防隊のメンバーであったため、行政との連携がスムーズに進みました」と崎山さん。行政と民間が手を取り合い活動する同隊だからこそ、アイデアや得意分野をかけ合わせれば実現できることがたくさんありそうです。
「最初は軽い気持ちで消防団に入りましたが、より良い地域にしたいという志のある多様な人が集まり、純粋な気持ちで活動しているのが清々しく、自分も役に立つことができてうれしいです。一方で、消防や防災において女性の声は不可欠なのに、まだまだ女性や子ども、高齢者の声が反映されにくい現状があります。常識や前例にとらわれることなく、前向きな発信や行動で女性消防隊の存在感を高めて、安心安全な地域づくりのために貢献していきます」と崎山さんは目を輝かせて話してくれました。