フェミニストカウンセリングの視点を持ち、女性が女性のサポート

NPO法人 博多ウィメンズカウンセリング

博多ウィメンズカウンセリングは、2006年に福岡市で設立された女性と子どもの支援団体です。現在メンバーは10人。電話相談やカウンセリングをはじめ、各種講座を開催したり、企業や自治体へ講師を派遣したりと、主に福岡県内でさまざま活動を展開しています。

女性の生き難さは、個人ではなく社会の問題である

博多ウィメンズカウンセリング(以後HWC)は、日本フェミニストカウンセリング学会が2005年に福岡で開催したフェミニストカウンセラー養成講座の修了生4人が、翌年に立ち上げた団体です。任意団体として活動し、2年後にNPO法人格を取得しました。「フェミニストカウンセリングは、女性による女性のためのカウンセリングです。伝統的なカウンセリングとは異なり、『女性の生き難さは個人の問題ではなく、社会の問題である』というフェミニズムの視点を持って、女性や子どもの問題解決をサポートすることが特徴です。当団体では、主にカウンセラーの資格を持った女性が、さまざまな悩みに寄り添いながらサポートしています」と代表の横田文子さんは説明します。

※日本フェミニストカウンセリング学会は、研究者やカウンセラーなどの専門家のほか、さまざまな立場の女性200人ほどが会員となり1993年に誕生した団体。現在、事務局は東京にあり、HWCは賛助団体として、連携した活動も行っています

カウンセリングや講座、講師派遣など多彩に活動

HWCの活動の大きな柱は、個人カウンセリングです。性暴力(DV・性被害・性虐待・セクハラなど)、親子・母娘・夫婦関係、結婚・離婚、対人関係、職場での悩みなど、生きづらさを感じる女性をサポートしています。横田さんは「特に多いのはDVと母娘関係の相談です。母と娘の関係は特殊で、母は娘のことに一生懸命になっているつもりでも、実は娘を支配しているケースがあります。娘もなぜ苦しいのか分からないけれど、カウンセリングを通じて母にコントロールされていると気づき、それでもなかなか離れられないという複雑な問題なのです」と話します。カウンセリング後、弁護士や関係機関に行く必要があれば、HWCは付き添いや書類作成も支援します。

また、さまざまな思いを持つ女性たちが安心して語り合える場づくり、自己肯定感や自信を高めるための自己尊重トレーニング、自分も相手も大切にしながら自己表現ができるアサーティブトレーニング(不定期)を行っています。

そのほか、あすばるや福岡市男女共同参画センター・アミカスで毎年講座を開催。デートDV予防教育ファシリテーターなどの養成講座を実施したり、学校でデートDV予防講座を行ったり、企業や地方自治体などに講師や相談員を派遣するなど、意欲的に活動しています。「福岡の女性支援団体としては後発ですが、地道に誠実に活動を重ねてきたことで、今では行政から相談され声をかけてもらえるようになり、うれしく思っています」と横田さん。

本人の意識はもちろん、社会の構造まで変えたい

HWCメンバーの田中絵里緒さんは、12年前に東京から福岡へ引っ越して子育てする中で、女性の現状に驚いたと言います。「DVに悩むママ友が多くて、悩みを聞き、弁護士や役所に行くときに付き添ううちに、専門的に勉強したいと思ったんです。そこで行政の方からHWCのことを教えてもらい、3年前にメンバーになりました」

これまでの活動で田中さんの印象に残っているのは、「2022年に開催した講座が新聞で紹介されると、団体への問い合わせが非常に多くなり、求められていたんだなと実感しました」と振り返ります。

1人でも多くの人にHWCのことを知ってもらうために、今はSNSも活用しています。今後について、横田さんは「ジェンダーの問題は根深いけれど、社会的弱者といわれる人たちの支援を頑張っている人たちとつながりながら、ジェンダー平等を目指していきたい。悩む人に寄り添い、本人や社会の意識を変え、少しずつでも社会構造まで変えていきたいです」と熱い思いを語ってくれました。(取材/2024年2月)