マルシェが届ける、病院と地域がつながる場所

元気なしめんちゅ

糟屋郡志免町で活動する「元気なしめんちゅ」。平成29年度に、あすばるが実施した「女性による元気な地域づくり応援講座事業」(通称・元気塾)に「志免活性化チーム」として開講しました。その後、卒塾生と共に活動することになったことで再構成し、「元気なしめんちゅ」と名前を変えて活動中。メンバーは実行委員5人を含め20人ほどです。

※「志免人」と書いて「しめんちゅ」と読みます。志免町が大好きな人達が一つになるイメージから付けられました。

志免町の買物難民と人材育成、一緒に解決したい

「ちょうど元気塾募集の話を聞いたとき、志免町では個人商店が減り、買物難民が増えていると知りました。それを解消できないかと思ったんです」と振り返ります。

 その当時、実行委員は志免町を元気にしてきた人気マルシェの立役者です。 1000人規模の集客を実現してきた経験から、マルシェ参加者ではなく、みんなが運営できるように「できることをできる人が」を達成できるしくみ作りを目指していました。  

 そこで、元気塾に応募する時に、「買物難民の問題を解決し、志免町を元気にするイベント団体の応援と自分で企画運営できる人材育成」をテーマにしました。その後、開講すると集まったのは講座の趣旨に賛同した“志免愛”の強い人ばかり。また、志免町以外の地域からも多数の参加がありました。

平成29年に元気塾のお試しイベントとして開催した「ココからマルシェ」。「笑顔の和が、ココ(心)から(体)はじまる」の意味です。協力団体の一つ、栄光会の施設である介護施設にて開催されました。入院患者や施設の入居者は自由に店に行けない、買物難民でもあります。患者さんが買物を楽しんで笑顔になる様子に感動し、その後も栄光会での継続開催を決めました。

病院の買物難民問題。マルシェで変わった病院と地域

 元気塾の終了後は、栄光会からの要望もあり、栄光会の施設にて1月と7月の年2回開催しています。「スローエイジング」など毎回テーマを決め、それに合う出展者をセレクト。マルシェには地域の人や子供たちが遊びに来て、患者も含めた様々な人が集います。まるで昔の地域コミュニティのような光景が病院施設内に生まれたのです。また、病院側にも変化がありました。買物を楽しむ患者の姿を見て、医師を始め医療スタッフが患者の日常の姿を想像し、退院後の生活を見据えた治療計画を真剣に考えるようになったそうです。

 また、実行委員が中心に運営するのではなく、 「リーダー、サブリーダーなどは毎回違う人にしてもらい、必ずみんな経験するようにしています」とのこと。各自が企画運営できるようにと、人材育成は続きます。また、イベント運営ではたいていリーダーなど主催者の一部に負担が偏り、疲弊してイベント自体が消滅しがち、という課題もありました。これはそれを解消する仕組みでもあります。

人材が育つ。別の地域で新たな団体が

 元気なしめんちゅは、「人の役に立ちたいという精神で活動しているので、大企業のマルシェにはない細やかさが持ち味。今後は各患者さんが買いたいものがあれば『今度届けます』と対応できるようになれたら」と夢を語ります。

 「私たちの目標は志免町だけでなく、それぞれの住む地域に持ち帰って、イベントの企画運営ができる人材の育成でした。そして近隣の町も一緒にみんなで元気になりたい」と語ります。

メンバーの中にはその後、自分の地域で元気塾を開講し、現在宇美町で活躍する団体「うみ☆ガールズ」を立ち上げた人も。元気なしめんちゅの蒔いた種は、着実に各地域で育っているのです。

(取材:2020年1月)

「ココからマルシェ」は介護施設の入居者さんも毎回楽しみにしています。
外部からの参加者も増え、交流も生まれています。