女性が尊厳を持ち、安心して働き続けられるように
ワーキング・ウィメンズ・ヴォイス
「ワーキング・ウィメンズ・ヴォイス」は、男女雇用機会均等法の内容に疑問を持った女性たちが集まり、1995年に福岡市で設立された市民団体です。働く女性を応援するため、講演会や読書会、電話相談、ロビー活動などに取り組んでいます。
均等法のより良い改正を目指して、市民グループを設立
1985年、日本で「男女雇用機会均等法」が制定されました。ワーキング・ウィメンズ・ヴォイスの前身となる「変えよう!均等法in福岡」が誕生したのは、均等法の制定から10年後の1995年です。設立したメンバーは、政治に関心を持ち、勉強会を開いていた女性たち。団体名が示す通り、改正される均等法に働く女性の声を反映させようと、全国的なネットワークと連動した運動を目指しました。
現代表の時永裕子さんは、均等法ができる前から、女性の労働環境に疑問を持っていたと言います。「労働組合の役員をしていて、募集から採用、昇進など、あらゆる場面において男女で大きな差別があると感じていました。均等法に期待していたのですが、実際にできた法律は男女差別をなくす努力義務が中心で、実効性が乏しい内容にガッカリしました」と振り返ります。
変えよう!均等法in福岡は、均等法が実効性のある法律に改正されることを目標に活動を開始。国際的なシンポジウムに参加するなど、他の団体と協力して運動を行いました。結果として、1997年に改正された均等法は、男女差別の禁止に踏み込んだ内容へと前進しました。
電話相談、講演会、読書会、レター発行を柱に活動
均等法の改正後、1999年にワーキング・ウィメンズ・ヴォイス(通称WWV)へと名前を変えて、働く女性の問題をテーマに活動を続けてきました。現在は会員60人で、主に4つの柱で取り組みを展開しています。
まずは、働く女性の声に耳を傾ける電話相談です。2008年に「働く女性のホットライン福岡」をスタート。毎月0と5のつく日に無料の電話相談を開設し、働くことに関する困りごとを聞き、共に考え、情報を提供しています。次に、専門家を招いた講演会や講座、映画の上映会などを開催しています。また、ニューズ・レターを年3回発行し、活動報告や問題提起などを行っています。
そして4つ目として、1冊の本について語り合う読書会があります。2019年から月1回、さまざまな本を取り上げて開催してきました。設立時からのメンバーで会計担当の山﨑眞由美さんは「読書会が私たちをエンパワーしてくれる存在になっています」と明かします。「長年活動してきましたが、メンバーの高齢化などもあり、活動を続けていくかどうか迷った時期に読書会を始めました。すると若い人や男性もたくさん参加してくれて、本をきっかけに多世代が自由に話し合える場になり、参加者たちにも大変喜ばれています」と山﨑さんはやりがいを感じています。
若い世代を中心にして、いずれはサポート役を担いたい
均等法の制定から、40年の月日が流れました。時永さんは「非正規雇用や男女賃金格差など、働く女性を取り巻く問題はいまだに山積し、それに伴って女性の貧困も大きな課題になっています」と厳しい現状にもどかしさを感じています。一方で、「ふくおかみらいねっと(福岡県男女共同参画推進連絡会議)の女性団体や、読書会で出会うさまざまな人たちとの交流がいい刺激になってありがたい」とも。山﨑さんも「若い世代がWWVの会員になってくれたり、大学生とやり取りが続いたりしていることがうれしい」と笑顔を見せます。
今後の活動について、時永さんは「大学で話をすると、これまで働く女性の問題について全く知らなかった学生でも、そうなのかと素直に受け入れてくれます。WWVでは若手2人が中心メンバーに入ってくれたので、うまく引き継ぎ、いずれは私たちがサポートする側になれたらと考えています。経験を重ねた私たちだからできることがあるはずですから。これからも女性の労働を中核に据えて、誰ひとり取り残さないジェンダー平等社会を目指して活動していきます」と話しました。