子どもの預かり事業を通して、地域の子育て支援の充実を図る
一般社団法人糸島市ファミリーサポート
一般社団法人糸島市ファミリーサポート(以下、いとしまファミサポ)は、糸島市で子育て支援や女性活躍推進に関わる活動をしているメンバーが集まって立ち上げた団体です。糸島市から「ファミリー・サポート・センター事業」を受託し、子育ての援助をしてほしい人・したい人を会員として、子どもの預かり事業を行っています。
子育て・女性支援のメンバーが団結して、行政の事業を受託
いとしまファミサポは、糸島で一時保育活動を行っている「ゆりかごの会」代表の吉村登美子さんが代表理事となり、2018年3月に設立されました。吉村さんは1996年、前原市(現・糸島市)主催の保育講座講習会の受講生と共に20人で「ゆりかごの会」を立ち上げ、長年にわたって地道に託児の活動を続けてきました。
「糸島市で子育てをする人たちをサポートしたくて託児をしてきましたが、民間で続けるには経済的にも仕組みとしても難しさを感じていました。一方で、国の制度として、市町村が実施主体となるファミリー・サポート・センター事業があることは知っていました。糸島市でこの事業を始められれば、安定して子どもの預かりができる、いつか実現したいというのが私の20年来の夢でした」と吉村さんは話します。
吉村さんをはじめ、糸島市で子育て支援や女性活躍推進の活動をしている人や団体の長年の活動が認められて、糸島市からファミリー・サポート・センター事業の立ち上げについて相談が舞い込みました。事業を受託するため2018年に設立した、いとしまファミサポには、代表理事の吉村さんを筆頭に、理事3人、監事1人、代表社員2人の全7人がメンバーに名を連ねています。
子育て支援を受けた世代が思いを受け継ぎ、支援する側に
理事の肥田美恵子さんは「うちの子どもは、ゆりかごの会さんの託児にお世話になって育ちました。子育てを支えていただき、本当にありがたい存在です。吉村さんの思いを受け継ぎたい」と思いを語ります。自身は現在「愛しmaman(いとしままん)」という子育て支援団体の代表として、地域食堂などの運営をしています。
ファミリー・サポート・センター事業では、子育ての援助をしてほしい人(おねがい会員)と子育ての援助をしたい人(サポート会員)が会員登録をして、子どもの預かりなど一時的に子育てを助け合う有償のボランティア活動を行っています。設立から6年が経ち、おねがい会員は513人、サポート会員は117人、おねがいも預かりもする人(どっちも会員)は14人にのぼります(2024年7月末)。肥田さんは「糸島市は転入者が多く、近くに両親や頼れる人がいない中で子育てをする核家族が増えています。そんな方たちにも安心して子育てできる環境を提供したい」と言います。
行政や団体と連携して、糸島らしい取り組みを展開したい
同事業のアドバイザーとして日々現場に関わっている立谷(たつたに)絵美さんは「地域の一般の方が子どもを預かることに意義があると思っています。子育て世帯が地域でいろいろな人とつながれば、子どもは安心感や社会性を育むことができて、親御さんにも頼れる場所ができます」と話します。また「最近は全国的に、シングルマザーなど困難な背景を持つ家庭が増えています。サポートが必要な家庭に出会ったら、行政やほかの団体につなげることも私たちの大切な役割だと考えています。糸島市の担当課と定例報告会を月1回行い、情報を共有。今後は市の子育て環境に関するビジョンを一緒に考え、課題も解決していければいいなと願っています」と先を見据えています。
立谷さんは「いとしまファミサポはいろいろな団体が集まっているので、連携してやっていけることが強み」、肥田さんは「代表の吉村さんが80代になってもパワフルに活動されているので、まわりの人たちが刺激を受けて頑張っています」と同法人の魅力を語ります。
吉村さんは「皆さんのご協力のおかげでファミサポの事業を受託し、相互援助活動や交流会の中で糸島らしい取り組みを充実させることができて、とてもありがたくうれしく思っています。糸島には子育てをサポートしたいという宝の人材が豊富です。ファミサポ事業は1対1の預かり事業に限られていますが、親が講座などを受けるときに子どもを預かる集団託児事業や、ファミサポでできたつながりを元に多世代交流の場づくりもやっていけたらと思っています。」とさらなる夢を語ってくれました。(取材/2024年8月)