男女共同参画の視点と実践を地域に広めたい

向かって左側2番目が代表の松尾さん

ちくしのフォーラム

 男女共同参画社会を目指して、2007年から筑紫野市を拠点に活動している「ちくしのフォーラム」。8つの市民団体と個人会員40人ほどで構成されるネットワークです。寸劇や○×クイズを取り入れた出前講座、講演会などを精力的に開催し、出前講座の参加者は、延べ約1万人にのぼります。

出前講座と講演会、会報の発行を柱として活動

 ちくしのフォーラムは、2006年に施行された筑紫野市男女共同参画推進条例の内容を広めようと、2007年に設立された団体です。条例を作るために集まっていた女性団体等のメンバーが、条例施行後に「ちくしのフォーラム準備会」として、福岡県男女共同参画センター「あすばる」の男女共同参画地域づくり基礎講座を受講。あすばるからの助成を受けて市内で男女共同参画に関する講座をスタートし、筑紫野市翼の会など8団体と個人会員からなる「ちくしのフォーラム」を立ち上げました。

 代表の松尾昌世さんは「条例を広めたいという有志が集まり、「あすばる」から助成金をいただいたことで活動を始めることができました」と当時を振り返ります。その後、市の支援を得て、市内各地や市外でも講演会や出前講座を開催してきました。団体設立から16年間で、出前講座は約200回、参加者は延べ1万人ほどになりました。個人会員には市の職員や元職員もいて、仕事の枠を越えたつながりもできています。

 また、会報「フォーラム通信」を年3回450部発行。多くの人に男女共同参画の大切さを知ってもらおうと、筑紫野市役所各課、社会福祉協議会などの関係団体、コミュニティセンター、小中学校、保育所、幼稚園などに配布しています。2022年には、団体として筑紫野市市民表彰を受けました。

楽しい寸劇で、見る人も作る人も学びが深まる

 ちくしのフォーラムでは、設立当初から出前講座に寸劇を取り入れています。「条例の説明会をしますと言っても人が集まりにくいけれど、寸劇なら気軽に見に来てもらうことができます。講演に比べて、寸劇の場合は見る人が自分ごととして感情移入できて、とても分かりやすいと好評です。脚本ができたら、みんなで練習しながら意見を出し合い、より良い作品になるように仕上げるのがちくしのフォーラムのスタイル。寸劇を作り、演じる過程で、私たち自身が学ぶことや気づくことが多く、成長できていると感じます。」と松尾さん。

 「寸劇には男女共同参画の視点を散りばめて、上演後に大切なポイントを解説することで、理解が深まるように工夫しています。また、劇をしてみたいと団体に入ってくれる人がいるのもうれしいです」と出前講座担当の伊藤さん。

地域の実情に応じた防災・避難所づくりを推進

 近年は、特に防災の分野に力を入れています。2018年に「あすばる」主催の「災害(復興)・防災と男女共同参画に関する講師養成研修」を受講後、「防災と男女共同参画」をテーマとして、寸劇「さあ、避難するばい!」や「避難所運営ゲームHUG」の出前講座を行っています。2020年度には内閣府男女共同参画局の「アドバイザー派遣事業」の認可を受け、「男女共同参画の視点を取り入れた避難所づくり」に関する座学と模擬訓練を開催しました。「講座には行政職員、コミュニティセンターや地域の方などが参加してくれました。みんなで同じ目線に立ち、避難所運営を疑似体験することで、学び合い実践することができました。ここで学んだ方が『地域に帰って、自分たちに何ができるか考えてやってみます』と言ってくださって、心強く感じました」と松尾さん。2022年からはコミュニティセンターで避難所づくり・運営模擬訓練を始めるなど、取り組みが広がっています。

 筑紫野市は福岡市のベッドタウンとして、鉄道沿線に住宅やマンションの建設が急激に進んでいます。一方、山間地域や兼業農家が多い地域もあり、出前講座で各地を回るにつれ、地域によって課題が異なっていることを実感していると、松尾さんは話します。「団体設立から16年、何とかなるの精神で、明るく前向きに取り組みを進めてきました。これからも各地域の人たちの話を聞き、地域の実情に寄り添いながら、男女共同参画社会の実現に向けて楽しく活動していきます」。(取材2023年/1月)